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事実の概要

(1)

警察官であるK1およびK2は、ホテルに宿泊するX(本件の被告人)についての110番通報に端を発して、ホテルに来着したのちに、ホテルの責任者であるAから、宿泊料金の支払いに応じないXの様子やXに薬物の使用も疑われることなどの説明を受けた。Xを退出させるようにAから依頼されたK1らは、XがK1による内線電話に十分に応答しなかったため、Aの了解を得て、Xに対する職務質問を実施することに決めた。¶001

K1らは、Xが滞在する部屋(以下では「本件客室」とする)の前に、Aと一緒に到着した。K1は、来訪を伝えたのに返事が得られなかったことから、施錠されていない外ドアを開けて、居室に通じる内ドアの手前の空間(以下では「内玄関」とする)に入ったのちに、ドア越しにXに声をかけた。Xは、内ドアを内向きに20~30 cmくらいの幅まで開けて、すぐに内ドアを閉めた。K1は、全裸であって体に刺青があるというXの姿を現認したのとともに、制服姿のK1と目が合うか合わないかの一瞬のうちに慌てて内ドアを閉められたことから、不審の念を強めた。K1は、Xによって内側から押さえつけられていた内ドアを押し開けて、これをほぼ全開の状態にして、内ドアの敷居のあたりに足を踏み入れた。そのとたんに、Xが両手を振り上げて殴りかかるようにしてきたため、K1とK2はそれぞれ、Xの腕を1本ずつ各自の両手でつかんで、内ドアから居室に立ち入って、すぐ右脇に置かれたソファーにXを座らせたうえで、Xの体を押さえつけた。¶002