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事実の概要

長野県南安曇郡三郷村および合併により同村を承継した同県安曇野市が、同村が過半を出資して設立されたトマト栽培施設の管理運営、農産物の生産、加工および販売に関する業務等を目的とする第三セクターの株式会社に融資したA等の複数の金融機関等との間で、当該融資によってA等に生ずべき損失を補償する旨の契約(本件各契約)を締結したことにつき、住民X(原告・控訴人・被上告人)が、本件各契約は、法人に対する政府の財政援助の制限に関する法律(昭和21年9月25日法律24号。以下「財政援助制限法」という)3条に違反して無効であると主張して、市長Y(被告・被控訴人・上告人)に対し、地方自治法242条の2第1項1号等に基づき、本件各契約に基づくA等への公金の支出の差止め等を求めた。第1審(長野地判平成21・8・7判タ1334号68頁参照)は、「損失補償契約と債務保証契約は、法的にはその内容及び効果の点において異なる別個の契約類型であるから、損失補償契約の締結は財政援助制限法3条に違反するものではない」などとして差止請求を棄却するなどした。しかし、控訴審(東京高判平成22・8・30判時2089号28頁)は、損失補償契約であっても、それが、「主債務者に対する執行不能等、現実に回収が望めないことを要件とすることなく、一定期間の履行遅滞が発生したときには損失が発生したとして責任を負う」内容のものであれば、「地方公共団体が他の法人の債務を保証して不確定な債務を負うことを防止しその財政の健全化を図る」趣旨を有する同条が類推適用され、その趣旨を「没却しないという特段の事情が認められない限り、住民訴訟による差止め請求」が認められるなどと述べて、差止請求を認容した。Yが上告受理申立てを、Y側に補助参加したAが上告をそれぞれ行った。¶001