事実の概要
1972年10月28日、X(原告・控訴人・被上告人=附帯上告人)が本件マンションに係る建築確認の申請をしたところ、Y(東京都―被告・被控訴人・上告人=附帯被上告人)の紛争調整担当職員から、本件マンションの建設に反対する付近住民との話合いにより円満に紛争を解決するようにとの行政指導を受けた。そこでXは、付近住民と十数回にわたり話合いを行い、上記職員の助言等にも協力的に対応していた。ところが、1973年2月15日、Yが新高度地区案を発表し、既に確認申請をしている建築主に対してもこの案に沿うよう設計変更を求めるとともに、付近住民との紛争が解決しなければ確認処分は行わないこととした。Xは、このままでは設計変更を余儀なくされ多大な損害を被るおそれがあると考え、同年3月1日、東京都建築審査会に「本件確認申請に対してすみやかに何らかの作為をせよ」との審査請求を申し立てた。Xがその後も付近住民との話合いを続けた結果、話合いがついて、同年4月2日、審査請求を取り下げ、同日建築確認がなされた。これに対しXは、遅くとも同年1月5日には確認処分をすべきであったとして、確認処分の遅延にともなう請負代金増加額等の損害賠償を求めた。第1審(東京地判昭和53・7・31判時928号79頁)は請求を棄却したが、控訴審(東京高判昭和54・12・24判時955号73頁)は、請求を一部認容した。そこでYが上告した。¶001