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事実の概要

X(原告・控訴人=被控訴人・上告人)は、昭和2年頃より、不動産業を営むY会社(被告・被控訴人=控訴人・被上告人)から甲建物を賃借していたが、昭和23年2月1日、自らの住居として用いるために、Yから甲をその敷地乙とともに買い受けた。この契約では、(1)昭和23年4月末日までに代金7万1000円を支払うこと、(2)代金完済と同時に登記を移転すること、(3)代金完済までは従前の賃貸借契約を継続することとされた。しかし、Xは、上記売買代金を支払えず、Yと交渉した結果、昭和26年末になって、売買代金の支払期限を昭和27年8月24日に変更し、Xは昭和27年1月以降の賃料を支払わない代わりに、同年度以降の固定資産税を負担する旨が合意された。Xは、昭和27年8月26日に売買代金を完済したが、賃料等の過払金が相当あり、これを固定資産税の支払に流用したいと申し出た。Yがこれに応じなかったので、Xは、Yの催告にもかかわらず移転登記手続に協力せず、数年にわたり固定資産税をYに支払わせ続けた。昭和33年1月17日、Yは、Xの信義則違反等により売買契約を解除して甲乙をAに売却し、同年3月24日、登記を移転した。昭和35年3月27日、甲乙はAからBに転売され、登記も移転された。Xは、Yに対して、移転登記手続の履行不能を理由とする履行に代わる損害賠償として、甲乙の昭和38年12月当時の時価を基に647万2000円および遅延損害金の支払を請求した。¶001