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事実の概要

本件は、X(原告・被控訴人・被上告人)のY(被告・控訴人・上告人)に対する認知請求である。Yと内縁関係にあったAがXを懐胎・分娩したが、YがXを認知しないため、Xは(Aを法定代理人として)Yに対して認知請求の訴え(以下「本件訴え」という)を提起し、第一審でXの請求が認容された(高松地丸亀支判昭和43・3・15民集〔参〕25巻4号645頁)ところ、Yが控訴した。¶001

原判決(高松高判昭和45・10・20前掲民集〔参〕647頁)の認定するところによれば、控訴提起後も、YとAの内縁関係は継続しており、YはAに度々訴えの取下げを要求していた。昭和43年5・6月頃、AはYの態度に腹を立てY所有の自動車の車体にYを誹謗する文句を書き、毀損した。これに対し、Yは警察に告訴するとAに告げ、それと共に強く本件訴えの取下げを要求した。Aは以前に刑事被害者として警察で取調べを受けた経験から、告訴により幼児を抱えて警察で取調べを受け、ひいては刑事処分を受けるおそれに畏怖し、Yが持参した取下書と題する書面に署名押印した。Aは改めてYの控訴代理人によって作成された同一内容の取下書(以下「本件取下書」という)にもやむなく署名押印を行い、Yが本件取下書を裁判所に提出した(以下「本件取下げ」という)。¶002